第17回チャイコフスキー国際コンクールが始まりました。
ロシアで開催される「チャイコフスキー国際コンクール」は、エリザベート王妃国際音楽コンクール、ショパン国際ピアノコンクールとともに、世界三大コンクールにあたり、音楽家にとって非常に名誉あるコンクールです。
緊張が高まる世界情勢の中、チャイコフスキー国際コンクールは、ロシアによるウクライナ侵攻を受け、去年、国際音楽コンクール世界連盟から除名されています。
日本からピアノ部門へのエントリーはマルセル田所さん、黒岩航紀さんの2名です。ピアノはヤマハを選ばれています。
お二人とも、1時予選は通過されました。
今回は戦争により危険もあり、応募者も少なく、また審査員も中々決まらず、その上観覧チケットもかなり売れ残っている様子です。
田所さんのツイートより
この度は日本をはじめ、遠く離れた世界の各地から応援していただき、そして数々のメッセージをいただき、心から感謝申し上げます。
戦時中の国であるロシアで開催されたチャイコフスキーコンクールに出場したことに際して、少しだけ私からの個人的な想いを書かせていただきたく存じます。
私は戦争を知りません。私は祖父母など人伝にしか戦争の話を知りません。
しかしこの世には、まだ争いをしている国や民族はたくさんあります。そんな中、幸いなことに私は音楽家として、手に武器ではなく、楽器を持って活動することが出来ています。これはとても幸せなことだと思います。
その私ができることは何か。元々は敵対していた、日本とフランスという2つの異なった国にルーツを持つ私は、特に何度も考えを巡らせることがあります。両親の祖父母からは、戦時中の体験や、国家観に関する話もよく聞きましたが、フランス人の母方の祖父母からは、敵国である日本についての恨みも聞いたことがあります。これまで私は、数多くの素晴らしい芸術や文化に触れ、心から感動する体験をしてきました。それらは日本やフランスのものもあれば、そうでないものもありました。感動に国境はなかったのです。そしてその芸術や文化に感動することで、それらを生んだ尊い国や民族も愛おしくなったのです。
今、私にできることは何か。それは音楽を奏でることに他なりません。素晴らしい芸術は素晴らしいのです。どんな国のものでも。芸術に国境はないのです。今回セミファイナルでは、敢えて作曲家としてあまり知られていないスヴェトラーノフの前奏曲から2曲を選びました。その2曲目の第9番は、”Vesnianky”という、春を呼ぶウクライナの儀式で踊られる踊りとして書かれています。そして最後に、スヴェトラーノフの作品と関連する形で、フランスのシャンソン歌手、シャルル・トレネの「4月のパリで」という作品を演奏いたしました。コロナや戦争など、毎日暗いニュースが続く中で、いつか私たちにも春が来ることを願い、この曲を選びました。
戦争をしている国や周りの国に、恨み辛みが渦巻いている中で、コンクールという場や結果に関係なく、一つの舞台としてこのプログラムを演奏できたことを誇りに思います。
この場を持ちまして、重ねてみなさまへ感謝申し上げます。
参加されているコンテスタントのご活躍を祈っております。