東京都現代美術館で開催中の 「坂本龍一|音を視る 時を聴く」展 に行ってきました。
坂本龍一さんと言えば、高校の時、同じ作曲門下生の男の子が「戦場のメリークリスマス」をさらっと弾いていて、それまでクラッシックだけを弾いてきた私に衝撃を与えた思い出があります。
坂本龍一さんの音楽や思想に触れられる、日本で初めての大規模な個展という事で、事前情報をチェックしながらも、実際に体験すると予想以上に圧倒される展示でした。
美術館に入ると、静寂の中に漂う微細な音が耳に入ってきました。
それは楽器の音だけでなく、水のせせらぎや風の音、電子的なノイズが交錯し、まるで「音の森」の中を歩いているよう。まさに、坂本龍一さんが「音楽」として追求してきた「環境音」の世界がそのまま展覧会場に広がっていました。
特に印象的だったのが 《TIME TIME》 という作品。坂本さんが最後に手がけた舞台『TIME』をもとに、高谷史郎さんと共同制作した映像と音のインスタレーションです。
暗闇の中に浮かび上がる水面、そこに映し出される風景や光の揺らぎが、時間の流れや無常を感じさせます。
音と映像がぴったり同期するわけではなく、それぞれがゆるやかに重なり合うことで、何とも言えない「間」が生まれていました。
また、アルバム『async』の世界観を体感できる展示もありました。
坂本さんが晩年にたどり着いた「不完全さの美」を感じることができる空間で、音が反響し、消え、また生まれていく。
まるで坂本さんの音楽そのものが生きているような感覚に陥りました。
この展覧会を通じて改めて感じたのは、坂本龍一さんにとって「音楽」とは単なるメロディーやリズムではなく、 時間そのものを感じるための手段 だったのではないか、ということ。
彼の音楽には余白があり、その余白に耳を傾けることで、私たち自身の時間や記憶が呼び起こされる。
また、彼が生涯を通じて追求した「環境との調和」も随所に表れていました。音楽と自然、人工音と静寂、過去と未来が交差するような展示構成は、まるで一つの楽曲を体験しているかのようでした。
「坂本龍一|音を視る 時を聴く」は、音楽ファンはもちろんのこと、美術や哲学に興味がある人にも響く展覧会です。
坂本さんの音楽をあまり知らない人でも、音と空間の関係をじっくり体感できるので、新しい発見があるはずです。
私のような坂本龍一世代だけでなく、
会場にも20代くらいの若者が多くいたのが印象的でした。
このアルバムをしっかり予習して行きました!